アショカ・ピラー
インド・デリーにある世界遺産クトゥブ・ミナール内にある錆びない鉄柱「アショカ・ピラー」。「チャンドラヴァルマンの柱」「デリーの鉄柱」とも呼ぶ。
鉄は非常に錆びやすいことは承知の上だが、この鉄柱はなんと1500年もの間、ほとんど錆びていないのだ。アショカピラーは、99.72%という高純度鉄で作られており、表面にはサンスクリット語の碑文が刻まれている。直径は約44cm、高さは約7m、地下に埋もれている部分は約2mである。
鉄について
鉄の形成過程で、加熱しながら叩いた鉄が錆びにくい。熱を加えて叩くことにより、不純物が外側に押し出され鉄の純度が上がり、鉄の内部では再結晶化が促進されるからである。そのいい例が日本刀だ。
なぜ錆びないのか?
実は、高純度の鉄だから錆びないというのは間違いである。
99.72%の純度なら、50年ほどで錆びるという・・・。
インドで産出される鉄鉱石にはリン(P)が比較的多く含まれている。
また、インドでは鉄を精製する際にカッシア・アウリキュラータというリンを含む植物を加えていた記録があるという。リンを豊富に含んだ鉄を薄い円盤状にして加熱しながら叩くと、鉄の表面はリン酸化合物で覆われる。その円盤を積み重ねてさらに叩いて一体化させれば、鉄柱の表面がリン酸化合物でコーティングされ、錆に強い鉄柱が完成するというのである。
ちなみに、地上部分の鉄柱の表面は錆が内部に進行していないが、地下部分では腐食がすでに始まっている模様。
故に、錆びない鉄柱ではなく、錆びづらい鉄柱ということになる。